春の変わりやすい天候が続きます。
五月晴れに五月雨と日々晴れたり曇ったり雨が降ったり・・・
樹木の芽は新緑から若葉へと勢いを増しますし、それにつれて初夏の気配が漂ってきます。
遅咲きのサクラを探して山を訪ねれば、まだ春のなごりに出会えたりします。庭では百花の王と言われるボタンの見事さに感嘆したり、甘い香りを運ぶフジの花房のそよ風を浴びたり、郊外の森では野鳥のさえずりを聞きながら緑の森林浴ができるとても気持ちのいいすてきな季節です。
雪解けの湿原では、ミズバショウがせせらぎのほとりを飾ります。お花屋さんでは母の日のプレゼント用に切り花、鉢花とさまざまな種類の花が出回ります。

ヒノデツツジ と ミヤコワスレ

【ヒノデツツジ】日の出つつじ
つつじは春に色鮮やかな花を咲かせる木ものとして、また、花の無い時も葉をつける枝ものとして扱われる花材です。花・葉・枝とすべて蜜に出生するので、傷んだ部分を取り去りよく整理して丁寧に用いれば、扱い方次第でいかようにも生けられる重宝する花材です。

万葉集にはつつじを詠んだ歌が八首もあることからも、昔ながらに愛されている事が伺われます。
『水伝ふ磯の浦廻(うらみ)の石(いわ)つつじ もく咲く道をまた見なむかも』
                       ―万葉集―185―日並皇子の舍人―

【ミヤコワスレ】都忘れ(のしゅんぎく)キク科
みやこわすれの可憐な花姿がとても可愛くて愛おしいです。長短をつけて軽やかに扱うととてもいい感じに生けることが出来ます。花・葉に漂う優しい雰囲気を活かして柔らかい芽だしの木ものにあしらって野の風情を楽しむことができる花材だと思っています。

正式名称は野春菊(のしゅんぎく)ですが、その花の美しさに都のことも忘れてしまうといった意味から付いた名と言われています。
日本では、本州・四国・九州の山地に生えていてみやまよめなの園芸種です。
多年生草本です。地中に匍匐枝(ほふくし)をつくり、それに新茎を伸ばします。茎は直立性で細く、高さは30cmほどです。
色は緑色で、全体的には線が細く繊細な感じです。
茎の項部で多少分枝してその先端に花を咲かせます。
葉は互生(互い違いに反対方向に出ること)であり、披針形、茎の下側につく葉には翼のある長い葉柄(はがら)が有ります。
上側の葉は次第に柄がなくなり、緑色の葉色も濃くなってきます。
葉緑に粗い鋸葉(のこぎりば)があり、葉の表裏面には短毛が生えています。茎の先端には紫色の頭状花(とうじょうか・小さな花が集まって一つの大きな花のように見える花・菊・タンポポ・アザミなど)を咲かせてとても綺麗です。

ムシカリ(右) と エニシダ(左)金雀児

【ムシカリ】虫刈・虫狩、別名:オオカメノキ
・開花時期:4~6月、落葉低木、新芽(緑)2~4月、花(白)4月、紅葉10月、スイカズラ科
日本全土の山地に生えているようです。高さ2~5mで、枝先の花序に小さい両性花をつけて、周囲を直径3cmほどの装飾花がとりまきます。
用途は幅広く使えて、私も1~6月に多く生けます。

「えにしだの黄色は雨もさまし得ず」 高浜虚子

「金雀枝の黄金焦げつつ夏に入る」 松本たかし

「えにしだの夕べは白き別れかな」 白田亜浪

【エニシダ】
えにしだは本数を多く用いて生花(せいか)の手練をみせる花材になります。この場合は、前後の小枝を残し、左右に拡がる枝を取り去ると姿が美しくなります。
せきかえにしだは、枝の先が帯状になったものを言います。
生花をはじめ、あらゆる花形につかえます。ためる時は小枝をさわらずに中心の軸だけを曲げると上手く生けれます。黃花と白花があります。
条(すじ)ものとして線の美しさを活かして用いることができる花材です。

黒花蝋梅と鈴蘭 クロバナロウバイとスズラン

ロウバイの名前は、蠟月(旧12月)に咲くことから、また花弁の光沢が蠟状であることからと言われています。梅の字が当てられていますが、梅とは関係無く、花咲く時期が重なるために付けられたのかもしれません。

臘梅(ろうばい)は、芳香を放つ蠟細工のようなふっくらとした黄色の花が魅力の花材です。枝は折れやすいため姿なりに用い、蕾がちのものを選ぶと風情が引き立って綺麗です。花時には葉が未だつかないので、椿などの葉の綺麗な木ものを一緒に生けると調和が取れます。

黒花蝋梅(フロリダろうばい)は、明治に北アメリカから渡米してきました。フロリダ州原産で、花色は緑紫~黒赤褐色であり、遠目には黒色に見えます。花は渋味があり、葉がのびたのちに5-6月に花が咲きます。

「臘梅や枝まばらなる時雨ぞら」 芥川龍之介

「臘梅のこぼれ日障子透きとほす」菅裸馬

「臘梅の香りが身に添ひて年守る」 三宅一鳴る

「臘梅の日の美しき初箒」 遠藤悟逸

スズランは葉のまだすっかり開ききらない花は穂咲きの先端が少し出たぐらいのものを、大小2・3本で小さく一種生けなどしても楽しいです。

「野の宿雪日ごと薄れて地の斑スズランの白き苔あらはる」 小島一清

「スズランに憩ふをとめ等の肩見ゆる」  水原秋桜子

「スズランや壁を飾れる描更紗(かきさらさ)」 川村黄雨

「大蟻のひとつふたつや君影草」 小笠原進草

山吹・ヤマブキ

「ほろほろと山吹ちるか滝の音」 芭蕉
ヤマブキは一重咲き、八重咲きがあり、また花色も黄色が基本色ですが白色もあります。
ヤマブキの八重咲きのものは結実しません。